5つの的外れな英語の教え方

口真似で英語が言えたからと言って、英語がわかっている訳ではありません。そしてその錯覚が英語の習得の大きな妨げになっています。

アメリカの写真

英語は母国語ではないのだからネイティブから直接口真似で英語を学べるといった、母国語を習得するような安易な方法で習得していくことは絶対にできません。

ネイティブだって小・中・高校の国語(=英語)教育を受けているからまともに英語を話しているのですよ。


なのに日本では様々な英語の教育現場で母国語を覚えるような安易さでその場限りの英語を教えています。
最も根本的な誤りはここにあります。

口真似主体のこども英会話、小学生の英検学習、小学校でのALT授業は全くの無駄です。中学からの本格的な英語学習の準備には全くなっていません。

なぜなら口真似主体では頭の中で整理が全くできていず、英語の積み上げができないので、
量的にも多くを覚えられないばかりでなく、覚えたと思ったものもその場限りの記憶であり、すぐに消滅していきます。
英語耳が残るとかいう人がいますが、子ども時代に覚えた数少ない簡単な英語の英語耳や発音が残ったところで、いったいどれだけの役に立つのでしょうか?
その程度の英語耳や発音なら、老年になってからだって簡単につきます。

だから外国語である英語はなおさら読み書きのみならず、文型の決まりを段階を踏んで、整理しながら「読む・書く・言う・聞く」を同時並行的に前進させる学習をしていく必要があるのです。

ここで事例をおはなししましょう
アメリカの写真

小生(当スクールのたった一人の講師の三橋史郎のことです)が、商社マンとして家族でニューヨーク駐在した際、5年余りニューヨークで過ごして6歳で日本に帰ってきた息子は、ニューヨークではアメリカ人の6歳の子供と同等の英語力がありました。
(すなわち、アメリカ人の大人とも子どもとも普通に会話ができていました。)

その後、駐在を終えて日本に帰国した半年後に、ニューヨークではよく我が家に遊びに来ていたニューヨーク事務所の秘書が日本に観光に来て息子に会った時には息子の英語は会話がほとんどできない状態になっていました。
(何とかその英会話を残してあげようと思って当初、英会話スクールに通わせていましたが、まるで焼け石に水でした。)

そして6年後に中学1年生になったときには他の同級生と同様にほぼ人生で初めての英語学習をするという状態になっていました。
このようなことは特別なことではありません。
程度の差こそあれ、100%の確率で発生しています。

口真似で覚える英語は何年やっても大した量は覚えられず、また覚えた英語は簡単に消滅していくばかりではありません。

生徒には面倒を感じない口真似で英語を覚えられたという錯覚だけが残ります。
だから本格的な学習の中学校の教材に入っても面倒な読み書きや文型の決まり等を段階的に習得していくことを回避したがる傾向が強く生じます。

日本人は特に「米国人なんか子供だって英語を話せるのだから、日本人だって苦労しないで覚えられる。」と思っている人が多いから(親もそう思っている人がほとんどのはずです)、この傾向に拍車がかかります。


だからかえってこども英会話等を学習した生徒は、中1の半ばについていけない生徒が多発します。
誰でも面倒なことはしたくないのです。

本格的に積み上げて学習していく中学からの英語にはそれらのことは絶対欠かせないのにもかかわらず。
(当スクールでは子ども英会話等を小学校時代にやってきて中学から入ってきた生徒にはもう一度ふんどしを締めなおさせますが。)

的外れな発音の教え方!!

「外国人の真似をしなさい」とか教科書で「こういう口の中の形で発音しなさい」とかの説明がありますが、これで英話の発音の全体像を納得できた人は今までにほとんどいないと思います。きっと教える側も納得できていないでしょう。
小生は高校・大学時代独学で発音記号を学び、CDやラジオを聞いて自分なりに推測して発音していましたが、到底納得のいくものではありませんでした。

だから、米国に駐在を始めた直後から英語にあって
日本語にない発音は何かを探し始めました。

発音の教え方

英語発音の全体像がわからないから、
誰もが英語を言いたがらない、
先生も読んで聞かせてあげたがらないし、
音読をさせたがらない、
生徒たちも音読をしないのです。

小生は約20年の国際商社マン時代、独立後の通訳、翻訳家時代を通じて英語の発音で何が通じて何が通じないかをもとに、前述の英語発音表「ローマ字の50音表に英語だけにある発音を加えた表」を作りました。

英語にあたって日本語にない発音と認識できる発音は次の12音です。

(1)赤字が口の形を変えて出す7音
[æ] apple, hard等・・・エの口の形で大きくアと言う。
[əː] first, heard等・・・口を縦に大きく開けず「アー」っと言う。これが一番日本人が間違いやすい。
口を縦に大きく開くとfast,hardとなってしまうから。
[θ] math, thigh等・・・舌を上下の歯の間にちょっと挟んで言う。サ、シ、ス、セ、ソ。
[f] father, wife等・・・下唇をちょっと噛んで言う。ファ、ヒィ、フ、ヘ、ホ。
[r] rain, rail, 等・・・・ 舌が口の中でどこにも触れないように言う。ラ、リ、ル、レ、ロ。
ちなみに、日本語のラリルレロは、la,li,lu,le,loの発音。
これは、言う度に舌が上の歯の裏側に当たる。
[ð] this, that,等・・・舌を上下の歯の間にちょっと挟んで言う。ザ、ジ、ズ、ゼ、ゾ。
[v] violin, victory等・・・下唇をちょっと噛んで言う。バ、ビ、ブ、ベ、ボ。

(2)黄色字が口の形をちょっと変えれば良く、カタカナでも表現できる5音
(日本語の50音表で左側の子音とは異なる子音で表示しているところ)
 [si] スィでありshi(シ)ではない。sit see(shit,sheとは違う)
 [ti] ティでありchi(チ)ではない。tea teacher
 [tu] トゥでありtsu(ツ)ではない。sit try
 [zi] ズィでありji(ジ)ではない。zero
 [di] ディでありji(ジ)ではない。deep dictionary

それにもっと安心してください。
英語が通じるかどうかはスムーズに言えさえすれば、ささいな発音の違いで通じないということはありません。
通じない場合にはネイティブの方に国語力(英語力)がないから推測出来ないと思って頂いて結構です。

その程度の英語力のネイティブに「日本人は英語がぜんぜんダメ!」なんて思われてくやしくありませんか?

また、例えば英国発音はhot[hɔt]で米国発音[haːt]だからわかりにくいという人がいますが、米国人だって[hɔt]と発音する人がいますし、どちらでも通じます。このことは、その他の単語でも同様です。

発音

初歩の段階から音節ごとの英語読みの仕方とその基本的なルールを教えないのが的外れ!!

3番目の誤りは初歩の段階から音節ごとの英語読みの仕方とその基本的なルールを教えないことです。

単語読みのルール

それを初期の段階から繰り返し繰り返し教えていくことが必要です。
教科書にも付録の部分にこの説明ができる表などがついています。だからそれを有効利用してください。

音節ごとの英語読みの仕方とそのルールを教えないので、生徒たちは単語の読み方と書き方を丸飲みしようとします。丸飲みは難しいのですぐに英語嫌いになっていきます。

中学1~2年の段階で、英語嫌いになる生徒のほとんどが、英語読みに慣れることができないことから少々長いスペリングの単語になるとついて行けず英語嫌いになっていきます。

また、何とか自分でやりくりして高学年になるまで授業についていっても、スぺリングが長い単語は覚えにくかったり、スペリングが似ている英語の見合けがつかなくて脱落していく生徒が多数でています。

頻繁に音読させないことが的外れ!!

ロックフェラーセンターにて

4番目の誤りは上記②の発音に対する理解が納得できていないこと、③の音節ごとの英語読みに自信がないということが大きな原因でもありますが、授業でも復習でも音読を頻繁にさせないことです。

教材の英文を訳せる程度に理解したら、繰り返し繰り返し大きな声で音読してください。

また、難しい単語は何度も書いて音節読みができるようにしてください。
また、音読の際、今自分は主語の部分を読んでいるなとか、動詞の部分を読んでいるな、とかを意識して音読してください。

英語は語順で文章を作る言語です。
それらがほぼ規則通りに順番に出てくるわけですから英語の文法というのは極めて分かりやすいものです。
そのわかりやすい文法を利用していないのが、決定的な的外れです。それを利用できるようにするのが音読と訳文からの元の英文を言う訓練です。

その音読はヒアリング力の向上の上でも極めて重要です。

上記②、③を踏まえて音読しているわけですから、あなたが音読している英語は正しい発音の英語です。
音読することによって頭の中に響きが残ります。
だから音読は自分の声でヒアリングを練習していることにもなるのです。

音読がヒアリング力の向上に役立つ理由はほかにもあります。
それは英語の理解度と理解のスピードの大幅な上昇です。
(音読するスピードで英文を理解しているわけですから)

難解な教材を使えば、実力がつくというのは先生方の的外れ、というより自己満足ないし見栄です。

アメリカの写真

某名門校等では高校1年の時から難解な副教材(大学入試レベル)を使い、充分理解するほどに教えもせずに、中間・期末の試験範囲にします。
生徒たちは悪戦苦闘してうっすらわかる程度にまで自習します。

でも、50~60点の平均点しか取れません。
その程度の理解度の英語力では、短期的知識ですぐに消滅します。
試験のあとは、ほとんど何も残りません。

先生方は、自分たちもそう教えられたから「苦労することが一番実力を育む!!」と思ってこんなことを続けています。
でも「苦労させる」ポイントが違うのです。

難解な教材を使っても構いません。
それなら対訳を作ってあげたり、難解な単語を書き出してあげたりして、授業時間内で充分理解できるほどにしてあげて下さい。
そして音読の模範を示すなり、CDを使うなりして生徒に音読をさせて下さい。

英文を音読しながらしっかり理解できるようにすることに、あるいは日本語訳文から元の英文を言えるようにすることに「苦労させて」ください。

そのレベルになって初めて英語は長期的知識となります。
某名門高校の定期試験でも80点レベルがとれます。
先生方は、50~60点を平均点にしたいと思っているようですが、それは教える側の都合で、生徒の英語力を向上させるうえでは全く馬鹿げたことを自分たちの都合にしているのです。

同様に文法も教えたらすぐになるべく多くの例題で確認させることでわかりやすく教えてあげて下さい。そしてその例文を日本語訳文から言えるように指導してください。

また、ある中学や高校では、ただ単に長い英文だけで丸暗記するようにさせていますが、これは生徒たちにとっては、苦労多くして実りなしです。
それなら、日本語訳文から英文を言わせるほうがずっと容易でかつ、英語力がつきます。
日本人は英語も日本語からすぐに引き出せる英語にしておかないと使えません。
ただ英文を丸暗記するというのは、必要なときに把まえることができるかどうかわからない英文を頭の中に浮遊させているだけです。そんな英文だけの丸暗記なんてすぐに消滅します。

リスニングは”耳”の問題ではありません。
だからシャドウイングもそれほど有効ではありません。単にリスニングの訓練をさせても無駄です。
リスニングは英語の理解力とそのスピードの問題です。スムーズに音読しながら、文の構造と内容を理解できるように、音読を繰り返したり訳文から元の英文を言える訓練をして下さい。